国際【アジア選手権】個の力とチームワークで築いた“進化を止めないチーム”

Photo by:ぉまみ / SOFT TENNIS Navi

第9回アジアソフトテニス選手権大会で6つの金メダル、2つの銀メダル、3つの銅メダルという輝かしい成績を収めた日本代表。日本ソフトテニス連盟強化委員長であり、今大会の日本代表選手団の団長としてチームを率いた高井志保氏に、チーム、選手、スタッフそれぞれの取り組み、そして今後の展望について伺った。

ソフトテニス日本代表選手団/高井志保団長

日本代表チームは今回のアジア選手権、さらには2026年のアジア競技大会を視野に入れて長期計画のもと強化委員会とスタッフ全員で準備を進めてきた。2022年の強化委員長就任以降、高井委員長は長期・中期・短期の各計画に沿ってMVV(Mission・Vision・Value)を整備し、選手個々の能力向上を重視した「個の強化」をチーム戦略の中心に据えてきたという。

アジア選手権で見せた“進化を止めないチーム”

「個の力がしっかりしていないと、チーム全体でもお互いに甘え合う部分が出てしまいます。個々が最大限に力を発揮できることが、チームとしてのパフォーマンスに直結するんです。JOC(日本オリンピック委員会)ではメダルの数を評価しているため、ソフトテニスが競技団体としての高い評価を得るためにも、国別対抗での勝利だけでなく個人種目も含めたメダルの数が重要となります。結局、世界一のチャンピオンになるのは個人やペアです。そのために個の強化は絶対に外せません」

個の強化を掲げながらも、真のチームワークを追求するため、選手・スタッフ間の連携やコミュニケーションの活性化に対する意識は強い。

「昔は男女で合宿も別々でしたが、今は一緒にやることで互いに刺激を受け合える環境になっています。今のような多様性の時代において、選手もスタッフも年齢・性別・立場にとらわれず、適材適所でいろんな人材を配置しながらお互いをリスペクトしあっていくことが大事だと考えています。
若い選手はまだ成長過程にあり、ときに迷うこともありますがその都度スタッフがサポートし、自分なりの克服の仕方や切り替え方を学んで、大会や合宿を通じて大きく成長してくれました。私自身も小さい頃から知っている選手が多いのですが、そのときどきで困難を乗り越えながらここまできたと実感しました。言葉にせずともお互いの姿を見て刺激を受け、『自分も頑張ろう』と思える関係性がありました。選手とスタッフがお互いを高め合う、このチームの雰囲気は本当に素晴らしかった。本当に進化を止めないチームだと感じました」

大会を通じて、選手一人ひとりが自身の特性を理解し、それぞれの個性を尊重し合い、役割分担を決めながら大会に臨んだことが印象的だったと高井団長は振り返る。チームとしての目標や計画をしっかりと共有しながら進めてきた結果が、今回のアジア選手権のメダルラッシュとして結実した。

国際大会での経験の蓄積をさらなる成長へ

「日本国内だけで戦うのであれば戦術面でもセオリーを使ったり、『普通はこうだ』と考えが狭くなりがちです。これまでの国際大会の経験の蓄積やデータ分析によって、セオリーが通じない場面でも戸惑ったり苛立ったりせずに対応できるようになってきているので、さまざまな経験を積んでいくことが選手とチームの成長に繋がっています。今回の経験もしっかりと振り返りをして、次に活かしていきたいと思います」

来年は日本が開催国として、名古屋でのアジア競技大会が控える。今回の結果をここからどのように日本代表のさらなる強化に繋げていくのか。

「アジアのトップに立った瞬間から状況は変わります。チャンピオンになったらその次の日から状況は変わっていくので、だからこそ今回の大会を振り返り、さらに進化を止めずに選手一人ひとりの個性を生かしながらチーム全体で成長していきたいです。選手もスタッフも、それぞれの役割を全うしながらチームとして成長していく。そこが本当に楽しみです」

勝利以上の価値を届けたい

高井団長は、金メダル獲得の意義を認めつつも、それ以上に『この活動を通じて世の中に何を届けられるか』が重要だと話す。

「勝利を喜んでくださるファンの方もいれば、選手やスタッフの生きざまに勇気をもらい、夢を描く方もいます。だからこそ、ただ勝つだけでなく、価値を持って世の中に何を示せるかにこだわりたい。私たちが見せるのは世界一のチームとしての姿。アンダーからナショナルチームまで総勢120名を超える選手たちがいます。さらにそれをサポートする各世代ごとの監督、コーチ、トレーナーで約30名にのぼるスタッフ。そのチームJAPAN全体が、ただスポーツとして勝つだけではなく、どういうものが世界一のチームであるか。コートのなかで表現される情熱、誇り、品格、そういった一つの文化のようなものを発信していきたいと思います。それを試合会場やメディアを通じてたくさんの方に感じてもらえたら嬉しいです」

今回の大会で見せた選手たちの成長とチームワークの進化は、コート上に立つ選手たちだけでなく、それをサポートしてきたスタッフを含めたチーム全体の成果だ。来年のアジア競技大会は、これまで日本代表チームや強化委員会が長い時間をかけて積み重ねてきた取り組みの集大成となるだろう。個々の力が結集し、互いに高め合うチームJAPANは、アジアの頂点のその先にあるさらなる高みを目指していく。

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