以前からその動向に注目していた卓球のプロリーグ、「T.LEAGUE」が遂に開幕しました。
テレビや新聞などを通じて目にした方も多いかも知れませんが、10月24日に男子、翌25日には女子の開幕戦がそれぞれ両国国技館にて盛大に開催されました。
もともと個人的には硬式テニスよりも、卓球やバドミントンのほうがソフトテニスに近しい競技と考えている私。
オリンピック種目かそうでないかという大きな違いこそあれ、部活動に根ざしつつ生涯スポーツとして幅広い年齢層に愛され、競技人口規模で見ても同じようなポテンシャルを持つ卓球。
卓球の国内登録競技者は33万人(※1)に対して、ソフトテニスの登録競技者は45万人(※2)。
(※1 公益財団法人日本卓球協会 平成29年度加盟登録人数)
(※2 公益財団法人日本ソフトテニス連盟 平成28年度加盟登録人数)
これだけ見ると、競技人口ではソフトテニスよりもむしろ少ない卓球。
しかし、卓球の潜在人口は実はとても大きいです。
ソフトテニスも国内愛好者700万人といわれるように、選手として大会に出場しているような人以外にも、競技に触れる人の数はその何倍もいます。
笹川スポーツ財団の「スポーツライフに関する調査2016」によると、過去1年間に1回以上卓球をした人は全国で663万人。
前述の「ソフトテニス愛好者」の定義は不確かですが、会場で流れていたムービーにも「国内卓球愛好者750万人」とあったとおり、実際にプレーを楽しむ人の数でいうとソフトテニスよりも卓球のほうが多いことが想像できます。
そんな隠れた人気スポーツともいえる卓球のプロリーグ発足とあって、この話を聞いたときから注目していました。
せっかくなら開幕の盛り上がりをライブで体感しようと、観戦チケットは事前に購入済み。
開幕戦は両国国技館ということもあって、もっとも安い2階席でも6,000円。
ちなみに、コートサイドのプレミアシートは10万円です!!
会場最寄りの両国駅ではTリーグの開幕を記念して、普段は使用されない臨時ホームで卓球が楽しめるイベントも開催されていました。
会場周辺も、国技館らしくTリーグ参戦チームののぼりが立てられ、雰囲気を盛り上げます。
仕事帰りの方でも観戦できるよう、平日開催ではあるものの試合開始は19時。
館内はメディアやスポンサー各社からのスタンド花で溢れ、注目度の高さが伺えます。
配布される号外やパンフレットなども豪華で、販促プロモーションにも力が入っています。
場内でのDJによる実況や、音楽や照明による演出によって非常にエンターテイメント性の高い観戦体験が提供されていました。
このあたりは一昨年に開幕したバスケットボールの「Bリーグ」のノウハウも取り入れていると聞きます。
卓球 Tリーグ(T.LEAGUE)公式サイト
私がTリーグ発足の話を知ったのは、今から2年ほど前。
Tリーグチェアマンであり、日本の卓球界を長く牽引してきた松下浩二さんのネット記事を目にしたのがきっかけでした。
リーグ構想は30年も前からあったといいますが、本格的に創設に向けて動き出したのが2009年の選手引退後としても、10年がかりで実現まで漕ぎ着けた松下さんの心中は感慨深いものに違いありません。
それでも、これがゴールではありません。
松下さんとTリーグの挑戦は、今まさにスタートラインに立ったところです。
そのあたりの経緯や今後の展望は以下に詳しいので、ご興味のある方はぜひご一読ください。
【Tリーグチェアマン 松下浩二インタビュー 前編】
https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/otherballgame/other/2018/10/19/_split_30/
【Tリーグチェアマン 松下浩二インタビュー 後編】
https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/otherballgame/other/2018/10/20/___split_9/
意外なことに、今回スタートしたTリーグはもともと存在していた国内最高リーグである「日本卓球リーグ」とは別の新リーグとして発足しています。
日本卓球リーグ実業団連盟が主催する日本卓球リーグは、ソフトテニスのトップリーグである「日本リーグ」と同じく、企業による実業団チームが主体です。
日本卓球リーグ
それに対してTリーグは、企業によるチームもあれば、地域ごとのクラブチームも参戦しています。
ちなみに、公には「プロリーグ」とは謳っておらず、あくまで「新リーグ」としています。
現時点で所属選手のなかには一部アマチュア選手も含まれるようです。
2020年まではそれぞれ独立したリーグとして継続し、その後統合を図るかどうかはその間の動向により決めていくそうです。
いずれにせよ、先進的な取り組みをしている卓球界の動きには今後も目が離せません。
私も卓球という競技を観戦したのは初めてでしたが、多くの学びや気づきがありました。
ソフトテニス競技の将来展望については以前ブログにも書いたとおり、その行く末を危惧している人も少なくないかもしれません。
過去記事:中体連に硬式テニス部設置でソフトテニスは廃れるのか?
スポーツは、「する人」「見る人」「支える人」で構成されるといいます。
個人的にはソフトテニスのさらなる普及発展を考えると、「見る人」「支える人」というところが鍵なのではと考えています。
「見て楽しむスポーツ」に育てることで、今は競技をしていなくてもかつて部活で親しんだような人たちが、もう一度趣味としてソフトテニス競技に関わりを持ちやすくなります。
現在、日本ソフトテニス連盟が主導して、天皇杯皇后杯のテレビ放映や、J SPORTSオンデマンドによるインターネットライブ配信など、さまざまな取り組みがなされています。
こうした広報活動は非常に重要なことです。
メディアへの露出機会の少ないマイナー競技といえるソフトテニスですが、最近ではeスポーツが大きな注目を集めているとおり、放映するメディアはなにもテレビに限る必要はありません。
ネットやSNSなども活用して、マスメディアよりも格段に安いコストで全世界に向けて発信することも可能です。
それに付随して国際普及のチャンスを作ることだって考えられます。
一方で、会場での観戦のしやすさを工夫して、選手や関係者以外のファンにも実際に試合会場に足を運んでもらうための工夫も大事です。
そうしたことを実現していくためにも「競技を支える運営側」についての課題解決が欠かせません。
私の周りにも各都道府県連盟や市区町村連盟の理事やスタッフとして活動されている方はたくさんいますが、そのほぼ全てが善意によるボランティアです。
貴重な休日に自分自身がプレーする時間や家族と過ごす時間を削って、競技振興のために取り組まれている姿には本当に頭が下がります。
ただ、そうしたボランティア前提で成り立っているからこその運営の限界も間違いなくあるはずです。
もちろんそれは大会運営だけでなく、ジュニアや学校の指導者、クラブ運営にもあてはまることです。
「近所にクラブがあればソフトテニスをしたいけど、知り合いがいないのでわからない」
「もっと地域の大会に出たいけど、そうした情報が手に入りづらい」
「大きな大会を観に行きたいけど、いつどこでやっているかわからない」
こうした状況を少しずつでも改善していけたら、部活動以外の競技人口も増えるでしょうし、そうなることで新たにソフトテニスを始める子供たちも増えるという好循環が生まれます。
いきなりソフトテニスにプロリーグを作るといったように話を飛躍させるつもりはありませんが、ソフトテニスのポテンシャルを考えれば、プロ化の実現だって不可能ではないと思います。
むしろオリンピック種目入りを目指すことに比べれば、その実現可能性はだいぶ高いといえます。
そうでなくとも、あくまでアマチュアスポーツとして持続可能な形でさらなる普及発展させていくためにも、ビジネス目線やビジネス手法を取り入れて、お金が回るような仕組みをつくるのも大事なことです。
スポーツ庁による成長戦略でも、「スポーツ分野の産業化を進めることにより、スポーツ市場を拡大し、その収益をスポーツ環境の充実に再投資する好循環を成立させ、持続可能なスポーツ産業の活性化につなげていく」ということが掲げられています。
具体的な数値目標としても、2025年までにスポーツ市場規模を現在の3倍となる15兆円まで拡大させることを目指しています。
プロ、アマを問わず、競技を取り巻く市場をスポーツビジネスとして捉えた場合にもさまざまな課題があります。
・競技経験者以外のファン層をどう取り込むか
・イベント興行としていかに集客して採算を合わせるか
・スポンサー企業にどこまでのメリットを提供できるか
・選手の生活や競技環境、引退後のセカンドキャリアをどうサポートしていくか
・関連ビジネスを含めてどう市場形成していくか
課題あるところに機会あり。
Tリーグが先例として一つの道標になり得ますが、JリーグやBリーグをはじめとしたさまざまスポーツも含めてお手本はたくさんあります。
「ソフトテニスで飯を食う!!」というテーマを掲げて起業した私。
明確なゴールイメージを持っているわけではありませんが、挑戦の先にこそ新しい世界は広がりますし、ソフトテニスならではの魅力を生かしたさらなる競技発展の形が必ずあるはずだと信じています。
残念ながら私はまだそれを実現するための実力も見識も持ち合わせてはいませんが、色々な立場の方のお話を伺い、ご協力を得ながら少しずつでも理想に近づけて進んでいきたいと思います。
いつか、「ソフトテニスで飯を食う」が私だけの夢ではなく、たくさんの人たちの夢になりますように。
なんか、あとがきみたいな締めになっちゃいましたが、もちろんソフメシはまだまだ終わりませんよ!(笑)
さあ、もっと頑張ろっと!